発端となったのはこちらのニュース↓


サンデーがWebでがんばる、と。

完全ジャンプ派の私にはまったくそそられない話ですが、漫画界にとっては大きな話のようです。

その辺を受けてか、たまたまか、最近マンガの電子化に関する記事をよく見るようになりました。



アクセスを稼ぐには旬な話題に乗っかることが肝要!ということで自分としてもこの辺に対する考えを披露しておこうと思います。


■電子化で得るもの、失うもの


出版社の立場に立って、マンガの電子化により得るものと失うものを考えてみます。

普通に考えると、媒体を増やすということは、購買層に接する面積が増えるということです。

単純にコストを抜きで考えると、読者数が一人でも増えれば売上が少しでも増えるはずなのでやった方がいいはず。

とはいえ、ことはそんなに単純ではない。
ごく簡単に考えても以下のような問題点が浮かんできます。

・電子化にかかるコストは電子化による売上だけで回収できるか

・既存顧客が電子版に流れることにより顧客単価の下落につながらないか

この二つが最も単純かつ重要な問題なので、逆に言うとここさえクリアできれば、少なくとも収益を上げるという観点においては問題はなくなるはずです。
些末なことはいろいろありそうですが。


■電子化の収益性の考え方は?


まず一つ目の電子化による収益性についてですが、紙媒体とWebなどの電子媒体がちょっと違うのは、変動費が著しく下がることです。

電子化、及びその維持にかかるサーバー代などは固定費としてほぼ換算でき、読者が一人増えるごとにかかるような変動費はほぼありません。
(厳密には読者数に応じてサーバーの強化も必要でしょうが)

紙媒体が一部ごとに紙代、印刷代がかかるのに比べて大きなメリットです。

※以前、固定費と変動費の考え方を書きました↓



この固定コストを上回る読者数を獲得できるのか、ということが当たり前ですが収益を確保するポイントです。

何人くらいなんでしょうね?
さっぱりわかりません。

が、マンガ以外の広告目的の様々な雑誌媒体は次々にWebの隆盛により取って代わられていきました。

これは単純に紙の印刷よりもWebの閲覧の方が収益性が高いことの証左ではないでしょうか?

ということでちゃんと計算してみないと何とも言えないですが、普通に考えるとWebの方が儲かるんじゃないかな?と思ってしまいます。


■電子版とのカニバリは起こるか?


次に、電子版を出すことによって既存の紙媒体購入者層が電子版に流れることにより、単価が下がり全体の売上を押し下げることが懸念されます。

Web=無料という考え方だと確かにそうですが、ほとんどの電子書籍自体は現在も有料で販売されています。

これはあくまで単価設定の問題なので、紙と電子版のつぶし合い、いわゆるカニバリゼーションが嫌であれば、単価を紙と同じにすればいいだけの話です。

紙と同じにしたら売れねえよ!と思われるのであれば逆に安くすればいいでしょう。

その際も、単に安くするのではなく、色々と工夫を施すことによって効果的な販売が可能です。

ざっと思いついただけでも、

・立ち読み層を取り込むために2~3作品限定で格安販売する

⇒現在は全く売上に貢献していない立ち読み層を売上に転化します。コンビニでただ読むのも移動時間、立ち続ける体力などのコストがかかっているので、そのコストをペイするような価格設定ならば売れる可能性があります。


・人気作品と新人作品をセット販売する

⇒自分などはそうですが、いつも人気のワンピース、ブリーチ、ナルトくらいしかた立ち読みしません。そんな層のために、人気作品と新人作品をセットにすることで、新人作品の潜在顧客を増やして単行本の売り上げ増につなげます。

などなど、マーケティングの基本的な考え方でいくらでも応用が利きます。


強いて言うならば、こういったフレキシブルな運用が可能になるのが、まさに電子化のメリットそのものです。

さまざまな組み合わせを試行しながら最も収益性の高い方法を模索していけば、それが既存の紙媒体のみの販売モデルを下回るということは、さすがにないと断言できるでしょう。


■とはいえ、大人の世界はね。。。


と、こんな風に単純化するとマンガが電子化していく、より主体的に書くと「電子化させていく」流れというのは、出版社にとって間違いなくビジネスチャンスであるといえます。

しかし、物事はそう単純ではないのが大人の世界の難しいところ。

今回は出版社だけの視点で書きましたが、取次、販売店、作者などなどさまざまな登場人物がおりますので、全員が得する方法というのはありません。

しかしながら、マンガ、特に雑誌の販売というのは下記のようにあからさますぎる右肩下がり。

manga

「ワンピース止まらぬ快進撃 共感を呼ぶ「確かな人間関係」」のフォトスライドショー:イザ!より引用

市場規模が縮小している業界で全員が助かる道というのはありません。

出版社が自ら生き残る道を探るならば、それは取次などを殺す道の可能性が高いでしょう。

もし、業界の全員が生き残る方法があるとすれば、それはマンガ自体の人気が上がり、業界そのものが拡大していくことに他なりません。

そして、それこそまさに電子化というチャンスに乗っかることで可能性が高まる部分だと思うのですがいかがでしょうか?

こんな単純な話は入り口として、なぜそもそもマンガの発行部数は落ちてきてしまったのか?

その読者が離れていった理由に抜本的な対策(それが単純な電子化だとはまだ思えませんが)を考えて、速やかに実行することがユーザーも含めた業界全員が幸せになる道だというのは間違いないでしょう。

日本が誇るマンガ文化の更なる躍進を願ってやみません。