先日、私が電車に乗っていた時のことです。

休日の昼間でしたが、マイナーな路線でしたので車内はガラガラ。

それぞれの座席の角に一人ずつ座っているかいないかぐらいの利用状況でした。

そんな中、私は当時一番空いていた優先席の端に座り、いつものようにスマートフォンをいじっていたときのことです。

突如、対面の優先席の逆端に座っていたオッサンが近づいてきました。

そして、「優先席付近では携帯電話をお切りください」のシールを誇らしげに指さしました。

それだけで、私は当然何を指摘されたのか分かったので、釈然としないながらも面倒事になったらいやなので、電源を切らずにいじるのをやめました。

すると、そのおっさんは満足そうに自分の席へと戻っていきました。


なんかダメな日本が凝縮されたようなこの話。
ちょっと順番にひも解いてみたいと思います。


■なぜ優先席付近では携帯の電源を切るのか


まず、初めに問題となるのが「なぜ優先席付近では携帯の電源を切る必要があるのか」という問題です。

この規則が出来たころの記憶では、たしか「心臓ペースメーカーなどに影響を及ぼす可能性があるため」とか言われていた気がします。

実際はどうなのでしょう?

と思って検索してみると、けっこうな量の同じような質問がヒットしました。

なんとオリジナリティのない、ではなくて皆疑問に思っていますよね。

ということでそれっぽい資料は簡単に見つかりました。


こちらによると、たしかに携帯電話などの電波はペースメーカーの誤作動を引き起こす可能性があるが、その距離は「22cm以内」というのが国の見解のようです。

なので、ペースメーカーから22cm以内に入る可能性がある場合には、携帯電話の電源を切ることは意味がありそうです。

ちなみに、医療機関において全面的に携帯電話の使用を禁止しているのも同じような理由のよう。医療機関は頻度や利用者の目的を考えると理解できますね。


■優先席付近で電源を切ることは意味があるのか


では、その22cmという基準を考えたときに、このルールは意味があるのか?

これは二つの理由でNOだと言えます。

まず一つが、距離の問題。

心臓から22cmの距離というと相当近いです。

自分で計算してみてもズボンのポケットから心臓までの距離は40cmくらいありそうです。

最も近い隣の他人はもう少し離れるでしょうから、まあ22cm以内に入ることはほぼないでしょう。

もう一つの理由が、時間の問題。

前述の調査結果ではペースメーカーと干渉を起こす時間については書かれていなかった。

なので、リスクを最大にとったとして一瞬でも距離内に携帯が入ったら誤作動を起こすとしましょう。

冷静に考えてください。
そんな機器、危なっかしくて絶対に使えません。

仮にそんなことが事実だとしたらペースメーカーをつけている人は外出しないでしょう。危険は電車の中だけにあるわけではないのですから。

もし一瞬でも誤作動を起こすとするなら、それはほんのちょっと機械の調子が乱れるだけで、利用者の健康には問題がないようなレベルに間違いありません。


こう考えると、携帯電話をペースメーカーの近くで通常利用するのは全く問題がないはずです。

危険なのは、相手の心臓の近くに一定時間携帯を密着させるような行為ですが、そんなことをしている人がいたら、別の意味で逮捕しましょう。

ということで、根拠から考えるとこの優先席付近携帯OFFルールは有効性という意味では意味がないでしょう。

むしろ満員電車の胸ポケットに入れるのが一番危険な気がするので、そっちを規制したらどうですかね?


■意味を考えずにルールを強制し自己満足に浸るもの


上記より、ルールの意味をしっかりと考えると、冒頭の私のケースのように周囲に誰もいない状況では、携帯電話の電源をOFFにする必要などないはずです。

当たり前ですが。

でも実際多いですよね。こういう自己満足に浸るだけの人。

ワイドショーのコメンテーター的と言いますか。

まあたまにワイドショーを見ると、ルールを破った人を非難するような報道の中で、たまにルールの存在意義について言及しちゃって、いい味出してる人もいますが。

でもそういう人も少しすると、番組の流れに迎合するようになるんだよなあ。お金って怖いね。

だいぶ話がそれましたが、既存のルールを疑うこともせず、またその意味も考えずに、自分が従う。しかもそれだけにとどまらず他人まで強制させようとする人というのはけっこういます。

タチが悪いのはそういう人たちに悪気はないということ。

むしろ正義感丸出しでしょう。

ただ考える能力が足りないだけです。

それでも力ない正義は無力、という言葉もあるように、そういう正義感バカには毅然とした態度で臨みたいものです。


■誤ったルールを取り下げずに日和見を決め込むもの


話はここで終わりではありません。

正義感バカのおっさんも困ったものですが、もっと問題なのは形骸化して意味のないルールを取り下げない交通機関です。

これもきわめて日本の官僚的な考え方と言えるでしょう。

どうやらアナウンスとして「心臓ペースメーカーに悪影響」と言わなくなったということは、おそらく交通機関はルールがほぼ無意味なことに気づいているでしょう。

それでもルールを撤回しない理由はなぜか?

答えはおそらく、自分は困らないからでしょう。

意味がないし効果もないので、ルールを取り下げて携帯を使用可としてもいいのでしょうが、そんなことをしても別に自社の利益が上がるわけではありません。

だからやらない。自分には関係ないから他人が微妙に不利益を被っても気にしない。

むしろ、論拠はあるもののノーリスク派の似非人権団体とかに絡まれたら面倒だからやらない。

という考えが働いているのではないかと、勝手ですが推測できます。

こういうことの積み重ねが社会全体を停滞させていくというところまでは考えが及ばない。悪か無能かはわかりませんが、いずれにしろ看過したくないですね。


とはいえ、現状うまい解決までのプロセスが思いつかなかったので、とりあえず世論を作るための問題提起にとどめておきます。

嫌だったら乗らなければいい、というのが私のような消費者側に許された選択ですが、インフラの代表選手である鉄道会社がその選択を迫るというのはいかがなものか。東電みたい。


なにはともあれ、書きなぐったらスッキリした。